被害者がいれば、加害者もいる。
被害者の家族がいれば、加害者の家族だっている。

そんな「加害者の家族」に焦点を当てた、全受刑者(そして今はまだ犯罪を起こしていない人も)必読の東野圭吾さんのベストセラー。


作品紹介



手紙 (文春文庫)


東野 圭吾
文藝春秋
2006-10





手紙 スタンダード版 [DVD]
山田孝之
日活
2007-04-27



手紙 [Blu-ray]
山田孝之
ギャガ・コミュニケーションズ
2013-02-02




あらすじ



以下Wikipediaより引用

弟の大学進学のための金欲しさに強盗に入った武島剛志は、思いがけず殺人まで犯してしまう。突然独りぼっちになり、途方に暮れる高校生の武島直貴だったが、謝罪するつもりで訪れた被害者の家の前で、遺族の姿を見かけただけで逃げ出してしまう。高校の卒業式の2日前の直貴の元に、獄中の兄から初めての手紙が届く。それから月に一度、手紙が届くことになる。 獄中の兄の平穏な日々とは裏腹に、進学、就職、音楽、恋愛、結婚と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、彼の前には「強盗殺人犯の弟」というレッテルが立ちはだかる。

それでも、理解してくれる由実子と結婚して一時期、幸せが訪れるが、娘の実紀が仲間はずれにされ、正々堂々と生きて行く意味を考えてしまう。そして剛志との縁を切るために、獄中の兄に宛てて手紙を出すのだった。





感想



この作品、自分は逮捕される前にDVDを観ており、逮捕されてから本を読みました。

本で泣いたのは、この1冊が初めてでした。逮捕されてからの方が、一層心の奥にまで内容がしみ込んできたのことを覚えています…。

特に物語の後半で主人公の直貴(弟)が刑務所の中にいる剛志(兄)に送った手紙と、その手紙を受けて剛志が被害者の家族に送った手紙の内容が…。詳しくは本作に譲りますが、本当にそれまでの年月の葛藤と行きついた結論が悲しすぎて報われなさすぎて、でもそれが正しいという気もして…。ラストの慰問場面(映画版では漫才)が唯一の救いかな?全編を通して映画より小説の方がそれぞれのエピソードが掘り下げられており、内容も詳しいのでおススメです。ただ、ここの所だけは小田和正の曲に山田孝之と玉山鉄二の演技がドンピシャではまって映画が原作を上回っていましたね。本当に「言葉にできない」です。

作品全編を通して著者から伝わっきたメッセージは、


「どんな被害者にも、そして加害者にも家族がいる。本人だけじゃなく、彼らも悩み苦しみ続けている。」


ってことですね。この作品がずっと心に残っている理由として、ほとんどの作品は被害者視点で描かれているのに本作はあくまで「加害者の家族の視点」に立っている、というのが大きいと思います。さらに著者の東野圭吾さんがすごいのは、どちらに肩入れするわけでもなく、被害者家族の視点も十分に織り込んでいる所ですね。だから心に入ってきやすい。

加害者にも、被害者にも、それぞれの背景やその人が歩んできた物語があるんです。

世間には「強盗殺人を犯した20代の男」っていう情報しかでてきません。だけど、その人は実は弟思いで優しい人かもしれない。自分の体や人生を犠牲にしてまで弟を養ってきたお兄ちゃんかもしれない。

以前の記事にも書きましたが、前科が一生つきまとうのは自分だけじゃないんですよね。被害者やその家族、周囲の人生にも影を落とすことになるし、自分自身の家族や周囲の人生にも間違いなく影響する。事件を起こした本人以上に「何で俺が?何で私がこんな目に?何も悪いことしてないのに?」と悩み苦しんでいる…。本作で扱われている事件は強盗殺人なので、正直全員がここまでバッシングされることは無いと思います。だけど、「自分の犯した罪は、自分だけのものじゃない。」ってことを理解するために本作は重要な役割を果たしてくれるんです。

初対面で会う人会う人に自分のことや自分の家族のことを正直に話せない状況。そして周りが信用できない状況…。多分みなさんが想像している以上につらいと思います。

この物語を読む・観ることによって家族や子どもがいる人何かは特には色々と考えさせられるハズです。罪悪感にさいなまれる方もいるかと思います。自分と同じく未婚の人は、恋愛や結婚にも躊躇する気持ちや将来への不安が芽生えるかもしれません。

ただ、それは人生のどこかで向き合わなきゃいけなくなる問題。全ての人にこの作品のケースが当てはまるわけじゃないけど…。自分の罪に対しての考え方の参考にしたり、報道される情報から少しでも想像を広げるための1冊としておススメします。



まとめ



・どんな被害者にも、そして加害者にも家族がいる。本人だけじゃなく、彼らも悩み苦しみ続けている。

・人生いつ「犯罪被害者の家族」、「犯罪加害者の家族」になるか分からない。

・自身の犯した罪の影響を考えたり、報道される情報から想像を広げるために非常に参考になる作品。


最後に



もうすでに罪を犯してしまった人はもちろん、犯罪を犯したことのない(むしろこちらの方が大多数ですが)にも本当におススメできる作品です。

いつも観ている刑事ドラマ、逮捕されたら一件落着で終わりじゃないですか?

本当の世界は逮捕されてからの方がはるかに長く、全然一件落着じゃないんです。



それでは、また。イノシシでした。