シティオブゴッド
この映画を一言でいうと、


「軽い、軽い。命が軽い。」


です。

本当にね、とてつもなく「命が軽い」んです。

そして、「人が人を殺すこと、人生が突然終わることが当たり前」なんです。


作品紹介


シティ・オブ・ゴッド [DVD]
アレッシャンドレ・ロドリゲス
角川書店
2012-10-26



(Wikipediaより引用)
1960年代から1980年代にかけてのリオデジャネイロ、中でも貧困にあえぐファヴェーラと呼ばれるスラム地域を舞台にした、強盗、麻薬ディーラーなどをして金を稼ぐモレーキ(ストリートチルドレン)たちの抗争が、実話を基にして描かれている。原題の "Cidade de Deus" とは、映画の舞台であり現存するファヴェーラの地名である。監督は、実際に現地のスラム街で素人を募集してオーディション、演技訓練を施し、一部の役柄を除き主要キャスト含めてすべて素人(200人)によるアドリブ主体の演技を撮影した。


あらすじ


(Yahoo映画より引用)
1960年代後半、ブラジル・リオデジャネイロの貧民街“シティ・オブ・ゴッド”では銃による強盗や殺人が絶え間なく続いていた。そこでは3人のチンピラ少年が幅を利かせている。ギャングに憧れる幼い少年リトル・ダイスは彼らとともにモーテル襲撃に加わり、そこで初めての人殺しを経験すると、そのまま行方をくらました。一方、3人組の一人を兄に持つ少年ブスカペは事件現場で取材記者を目にしてカメラマンを夢見るようになる。70年代、名をリトル・ゼと改めた少年リトル・ダイスは、“リオ最強のワル”となって街に舞い戻ってきた…。

感想

軽すぎですよ、命が。

「バトルロワイヤル」とか「悪の教典」みたいなエンターテイメント的な軽さではなく、「リアルに軽い」。
罪悪感の欠片も無い。そもそもこの世界でのそういったものは無用であり、危険ですらある。

よく、「人の命は地球より重い」とか「人間、生きているからには絶対に意味がある」とか言われますけど、この映画の前にはそんな言葉は全くの無意味。

少し前に「置かれた場所で咲きなさい」という本がベストセラーになりましたね。


この映画を観て思うんです。「置かれた場所が劣悪すぎると、咲く前に腐るか死んでしまう」って。


自分が自己啓発書(特に「引き寄せの法則」なんか)を丸々鵜呑みにできないのは、「こんな世界でその法則って通用せんやろ!」と思うからなんです。

だって、生まれたときから生きるために組織に入り、組織に居続けるために人を殺し…なんて生活がずっと続いてたら、それってもう本人の資質がどうこうの問題じゃない。「そうしなければ生きていけない状況」があるわけで…。


性善説」でもなく、「性悪説」でもない。「性善悪説」。

人間は生まれたときから(個人差があるにせよ)どちらの資質も持ち合わせており、どちらが伸びやすい環境や状況にあるかどうかで全然違った人生を歩んでいくんだと思うんです。


そもそも、「善」だの「悪」って完全にわけること自体が不可能。それこそ、生まれた時代や国、地域、個人の価値観、そのときの状況によって100人いれば100人の「善悪」がある。

映画の途中で小学校にも入っていない男の子が、組織に入る度胸試しのために人を殺す場面があります。この場面で殺す以外にこの子にどんな選択肢があったのか?、と…。

この映画を観終わったとき、自分の中で「犯罪を犯すことへの心理的なハードルが低くなっている」ことを確かに感じました。

登場人物と自分たちが違うのは、それが「映画という数時間の疑似体験」なのか、それとも「生まれたときから、そしてこれからも続く日常の体験」なのかの違い。

前者は、その後は日本という国、さらにはその中でも安全な地域での生活が始まります。すぐに元の価値観に矯正されていくことでしょう。

だけど、後者はそんな生活が1日24時間、1年365日ずっと続くわけなんですよ。もうね、誰だって狂っちゃう。

そして、すんごい違和感を感じたのは

「こんなにも犯罪を犯しまくってるのに、彼らが一様に明るい。」

ってこと。「え?そんなに軽いノリっ?!」というか、なんというか。その明るさが逆に怖い。お国柄もあるでしょうけど、「人を殺す」ことが完全に日常の一部になるとこうなっちゃうのかな~、と思うわけです。詳しくは映画をご覧いただきたいですが、ラストシーンなんてもうこの映画メッセージを見事に表してる。「負の連鎖は続く」という。



ここまでマイナス面ばかりを上げてきたので、プラスの面も。


それは「人間の生きようとするエネルギー」のすごさ。


登場人物はみな「なぜ俺は生まれてきたのか」なんて考える暇すらありません。もう一日一日が勝負、だから生きようとすることに対してのエネルギーが半端じゃない!!ただただ、食う、殺す、笑う、そして毎日を生き切る、という感じ。なんというか、「たくましさ」や「図太さ」がエネルギーとして画面からビリビリ伝わってきます。「お前は毎日生ききってるのか?」って問われている気分。いやぁ、人間のたくましさはスゴい。

「自己啓発書だけじゃ救えない、絶対的に報われない世界もある」ってこと、そして「そんな中でも生きる人間のたくましさ」を教えてくれた1本でした。


まとめ



・人は生まれた環境、育った環境により、どんな風にもなりえる。

・「性善説」とか「性悪説」ではなく、「性善悪説」。どちらが伸びる環境にあるかが大事。

・そもそも、「善悪」自体の判断も時代、国、地域、個人、状況により全く異なる。

・「絶対的に報われない世界」はたしかに存在する。

・「負の力」に「負の力」で対抗すると、負の連鎖が永遠に続いていく。

・人間の生きようとするときのエネルギーはすごい。


最後に


実話をもとにした作品なので、最後のエンドロールには映画のモデルとなった実際の映像が数多く出てきます。

なんかそのエンドロールだけで「本当に実話をもとにしてるんだ…」と空恐ろしくなる…。


この映画を観た後は、「今自分がすさまじく恵まれた環境にいる」と実感できるんではないでしょうか。


今いる世界からちょっとはみ出し、価値観をぶっ壊すための1本として強くおすすめです。


イノシシでした。