贖罪

逮捕された人間として、避けては通れないのが「罪を償う」ということ。

かくいう自分も「罪を償うって何?」と人並みに考えてきました。


「償う」という言葉の意味を調べてみると以下のような説明が並びます。

【新明解国語辞典】 (第五版)
1.「弁償する」の和語的表現。犯した罪の罪過の埋め合わせを罪過、労働でする意味を含む。

【大辞林】 (第三版)
1.埋め合わせをする。特に,弁償する
2.罪やあやまちの埋め合わせをする。 

【goo辞書】
1.金品を出して、負債や相手に与えた損失の補いをする。弁償する。
2.犯した罪などに対して、金品や行為でうめ合わせをする。


なるほど。どれも似たようなことですね。

辞書的な意味でいうと、「万引きしたら、謝罪(行為)し、その商品の代金を払う。(金品)」のが「償う」にあたるのかな。

一応社会的には、「法で裁かれる」=「罪を償う」ことであり、それ以上のことは「義務」としては発生しません。

受刑者でいうと、「懲役生活を終えたら、事件に対しての償いは終わった。」ということです。


だけど、被害者感情からすればそれだけで「罪を償うこと」になるはずもなく…。

自分は加害者ですが、「もし自分の大事な人が傷つけられて、その犯人が数年後のうのうと社会生活を送っている。」なんてことは、想像するだけで腹が立ってきてしまいます…。もっと具体的にいうと、自分の親が飲酒運転でひき殺されたのに、相手はほんの2~3年で社会復帰をする、みたいな状況でしょうか。

さらに、いくら加害者が「法で裁かれた」といっても、被害者からすれば事件に巻き込まれたデメリット(負った傷、費やした時間や労力)だけが残り、何のメリットもありません。正直、百害あって一利なし、のような状況なんでしょう。「加害者も同じ目に合わせてやりたいっ!」てのは、ごく自然な感情だと思います。

う~ん。こう書いてみると、「法で裁く」ことには限界がありますね…。それと同時に「償い方」もどうしていいものやら…。まあ、人間がすることなので、不完全が当たり前といえば当たり前ですが。


当たり前のことですが、100個の事件があれば、100個の背景があり、一概に正解はありません。

事件の内容によっては、単純に被害者と加害者に分けれないこともあるでしょう。直接的な被害者がいないケース(例:薬物使用や組織相手の詐欺等)や、自身が加害者であり被害者でもあるケース(例:ケンカでお互いが傷害罪)など…。

こればっかりは自分自身で答えを見つけていくしかないですね。


自分の場合、「目に見える個人的な被害者がいないケース」なので、逮捕されてから「自分にとって被害者とは何なのか?そして罪を償うとは何なのか?」ってことについてはかなり考えました。

「事件によって迷惑をかけた人たちが被害者なのか?」とか、「自分をこれまで信用してくれていた人達全員が被害者といえるのでは?」とか、「じゃあその人達に対してできる償うという行為ってなんなのか?」とか…。


そんな中、自分が行き着いた結論は、


「自分が今回の事件でかけた迷惑(デメリット)以上の価値(メリット)を世の中に提供する。」


です。「被害者(または間接的にそれにあたる人)に直接償う」って行為はもちろん大事。ただ、それには限界があると思うんですね。そもそも「被害者1人1人が納得できる償い方をする」っていうのは現実的には非常に難しく、結局の所は被害者本人にしか分からない。

ならば、ということで行き着いたのが先の結論です。

これは何も「償う」に限ったことではありません。

例えば「恩を返す」という行為。

これって、「恩のある本人に返す」っていうのは限界がありますよね?自分なんて親にもらった恩を全部返すのことなんて到底できないと思います。だから、親からもらった恩は、もし自分に子どもができたら子どもに返す、みたいな感覚です。他の例でいうと、「誰かに親切にされたなら、他の誰かに親切にする。」とでもいえるでしょうか。

自分がこうしてブログを書いているのもその「償い」の一つともいえますね。自分が今回逮捕され、刑務所生活を経験したからこそ、「元受刑者の社会復帰」という社会にとって大事な問題に取り組める。「どん底に落ちた人間だからこそできることがある」と思うんです。それによって少しでも救われる、勇気をもらえる人が出てきたら、それこそが自分にとっての「事件でかけた迷惑(デメリット)以上の価値(メリット)を世の中に提供すること」になるんじゃないかな、と。そのためにも今後もっと色々と動いていきたい。


繰り返しになりますが、人によって「罪の償い方」は千差万別。これっ!といった正解はありません。「償い?刑務所行ったんだから十分だろ。」って方ももちろんいると思います。

今回の記事は、逮捕の経験をされた方や元受刑者、または今まさに受刑生活を送っている方、等々…、「みんなそこのところどういう風に考えて、どういう風に折り合いをつけてるんだろうな。」と思って書かせてもらいました。

また、「償うって何っ?!」と悩んだり迷ったりしている方にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。


「自分の人生で受けた恩は、自分が生きている社会にそれ以上のものを返す。」


そんな人間になれたらいいなと思っています。


それでは今日はこの辺で。イノシシでした。