以前の記事で「es」という映画をおススメしました。

「es」はざっくりいうと、「人はいとも簡単に犯罪者になる。」ということを認識させてくれる作品。

そして今回の「THE WAVE」は、「独裁は人工的につくれてしまう。」ということを教えてくれました。
ヒトラー


作品紹介(シネマトゥデイより引用)


THE WAVE ウェイヴ [DVD]
ユルゲン・フォーゲル
アットエンタテインメント
2010-04-28

独裁政治を学ぶ体験授業をきっかけに洗脳されていく高校生たちの姿を描き、ドイツで大ヒットを記録した心理スリラー。アメリカで起こった実話をドイツの高校に置き換え、『エリート養成機関 ナポラ』のデニス・ガンゼルがメガホンを取った。主演には『エーミールと探偵たち』などに出演するドイツの俳優ユルゲン・フォーゲル。単純な興味や好奇心、ゲーム感覚から、あっという間に集団狂気に変化していく様子は、実話ならではのリアルさを帯び、身の毛もよだつほどのラストも衝撃的だ。


あらすじ(シネマトゥデイより引用)


自由な雰囲気で生徒に慕われるベンガー(ユルゲン・フォーゲル)は、校長の要請で独裁制の授業を担当することに。あまりやる気のない生徒に、「発言するときは挙手して立つ」など独裁制の実験を取り入れようと提案。しかし、ベンガーの予想を超え、独裁制に魅了された生徒たちは、学校外でも過激な活動をするようになり……。


感想


「何であんなことに夢中になっていたんだろう。」


みなさんの人生においてもこういった経験って、少なからずありませんか?

そのときは本当にそのことで頭がいっぱい。なのに時がたって冷静に振り返ってみると本当にアホくさい。なんてこと。

こんな他愛もない笑い話として終わってくれたらいいんですが、この作品はそれじゃあ終わらせてくれません。

最初はあんなに馬鹿にして反抗していた生徒達が徐々に、本人たちもそして独裁している側ですら気づいていない内に独裁されていく…。

人間って、色んな意味で「慣れ(適応し)」てしまうんですね…。


まず、そもそもの大前提として、独裁とは一人では成り立ちません。

「独裁する側」と「独裁される側」の両方が必要。

最初から「自分、独裁されたいっす!!」何て人間はよほどのドMじゃない限りいないでしょう。大多数は「独裁なんてまっぴらゴメンだ!」と思うはず。この作品に登場する生徒達もそうでした。

でも最終的には完全に独裁されちゃってます。

じゃあ、どんな風に生徒が独裁されていくのか?

 人工的独裁のレシピ



①「みんなが従わなければいけない理由や状況の中で始める。」
…今回は「授業だから」というのが導入の理由であり状況。大多数がしぶしぶではあるものの、「まあ授業だから仕方ないか」と承諾する。

②「ルールは絶対ということを導入時から徹底する。」
…席を立って発言、自分のことを様づけで呼ばせる、とか最初からルールに関しては徹底されています。

③「全体が楽しめるもの」から導入していく。
…②と同時進行。全員で足踏みしたり、みんなでチームの名前を決めたり。②だけでは窮屈すぎるので、「何か新しい、面白いことをしている。」と感じてもらえればしめたもの。

④徐々に賛同者があらわれてくる。
…その傾向が特に強いのが、「現状に不満を抱いている生徒」。自ら親衛隊を希望したイジメられっ子の男の子なんて正に典型例。そして、そういった者に対して具体的な模範行動(=規律)と役割と与える、と。こうすることによって、日頃満たされていなかった承認欲求が、その集団の中では満たされるわけです。もっとカンタンにいうと、「俺、めっちゃ必要とされてるやん!」感がハンパ無い状態になる。さらに以前の不満だらけの現状には逆戻りはしたくない。だから今の状態(=集団・組織)を過剰なまでに守ろうとする傾向が強くなる。

⑤賛同者が徐々に増えてきた集団に、視覚的にも「自分たちの集団は特別だ」と思わせるような仕掛けをしていく。
…チーム名や白シャツのユニフォーム、敬礼の合図、ロゴマーク、等々。

⑥不満をぶつける矛先(=敵)も加えていく。
…民主主義コースのクラスを敵対視させるような発言を繰り返したりしてました。

⑦ルールを徹底しながら、②・⑤・⑥を繰り返していく。


こう書くといかにも簡単で、単純。「自分は大丈夫」と思うかもしれません。だけど、渦中にいる本人たちは気づいてないんですよね。

だって最初は「何か面白いことやってるな。」とか「まあ、授業だし仕方ないか…。」何て軽い気持ちで始めてるんですから。

そして最終的に、規律に反する周りの声は、全て「敵」として認識してしまう…。

これは本当に恐ろしいこと。自分も逮捕されてつくづく感じるのが、「負の感情の方向性はめちゃくちゃ大事」ってことですね。「負の感情」自体は何かを成し遂げようとするときには大きな力になりますし、かまわないと思ってます。しかし、その方向性を間違えてしまうと、とんでもないことになる。正に自分がそうでした。

だけど、独裁って最後は悲惨な結末を迎えることが多いんです。(これまた自分にも当てはまる…)

歴史ではどの独裁者も最後はだいたいあんまりいい死に方してませんね。

暗殺されたり、自殺したり。

だから独裁って、


「一時的には強烈に機能するけど、長期的にみるといつかボロが出る。そして独裁者自体にもコントロールできなくなって滅びる。」


んだと思います。

これは会社や集団組織でもおんなじことがいえるのかな。

この作品で監督が伝えたかったのは、これなんじゃないでしょうか。


 もう1つ「この映画すごい!」と思ったこと。



もう1つ、「この映画すごい!」と思ったのが、この映画を創った国を知ったとき。


そう、ドイツなんです。


ドイツで独裁といえば、まず真っ先に第二次世界対戦のヒトラー率いるナチスが思い浮かぶと思います。独裁の教科書、とでもいいましょうか。しかも作品紹介にあるように、元はアメリカの実話をわざわざドイツの監督が映画化しているんですね。これって、明らかに「自戒」の意味が込められていると感じざるおえません。ドイツ国民からしたら完全にドイツ史の中の「恥部」であり、「黒歴史」なはず。それをこうもエグって作品にする監督も監督だし、それを受け入れる国民(ドイツで大ヒットしている)もすごいと感じます。自分はドイツに行ったことも無しい、ドイツの人と会ったり話したりしたことはありませんが、何かものすごく「自戒の精神」がある国民性なのかな…、とか思っちゃいました。戦争について自分は特別何の知識もありませんが、「失敗から目をそらさない」という姿勢は戦争に限らず人生において見習いたい点でした。


まとめ


・独裁にはレシピがある。

・独裁される側は、最初から「独裁される」、という認識はない。「知らず知らずのうちにそうなっていった。」という方が適切。

・独裁は不満がある状況で生まれやすい。

・独裁は短期的には大きな力を発揮するが、長期的には滅ぶことが多い。

・これまでの失敗から目を逸らさず、ちゃんと向き合うというドイツ人監督の意志が見える作品。


最後に


自分も将来起業すると考えている人間の1人として、反面教師として非常に参考になる1本でした。いやあ~、世の中色々やってる人がいるもんですね。これからも多くのことを吸収していきたいと思う今日この頃でした。

たまにはこんなクソ真面目なブログも。それでは、イノシシでした。