【イノシシ獄中日記⑤】


高松刑務所で初めての夜を過ごし、ムクッと起き上がるイノシシ。

朝食が支給されると部屋の中で一人だけご飯の量が増え、「B食」になっていました!

(ご飯は作業内容によって量が変わり、A→B→Cの順でご飯の量が多い。)

居室内作業の受刑者は「C食」なので、これは「分類センター工場へ今日移動になる合図」ともいえます。


いよいよか…('д` ;)


朝食後、刑務官から「荷物をまとめとけよ」との指示。

しばらくすると移動に付き添う刑務官が登場。

昨日会ったばかりの部屋のメンバーに挨拶すませ、いざ出陣。


そして自分がこれから生活する居室に荷物を置いて、そっから工場に行くことに…。


で、まず最初は意外なところにビビりました。


建物がめっちゃキレイ


ってことと、


軽く軍隊みたい


ってことに。

どうやらその当時高松刑務所は施設の建て替えを進めていたらしく、センター工場とその居室は建て替えの直後。また、それまで高知刑務所でしてきた生活とは行進や整列などの動作のスピードが全然違う!

当時の僕の日記にはこう記されています。



一言、「新しい」。
建て物、居室、全てにおいてめちゃくちゃキレイ。普通のマンション並み。テレビもあるし、久々に「動画」を見た。噂の通り、担当はかなり気合が入っており、声もバカでかい。軽く、軍隊みたい。逮捕される前に想像していたような刑務所のイメージの通り、という感じ。動きも早い早い。やけどやっぱり他にも人がいるっていうのは気持ち的に全然違う。話すっていうのは、人間にとって大きな役割を果たしているなあ、と感じた。

こんな感じ↓

刑務所 雑居
(※写真は網走刑務所の展示館(?)のもの。奥の小部屋はトイレ。)

刑務所 雑居2
(もう一枚は反対側からのもの)


まあとにかく建物がめっちゃキレイでしたね。「本当にこんな所で生活さしてもらっていいの?」てなぐらいに。トイレもビッカビカ。手で便器の中とか洗ってましたから。

写真みるとめっちゃ懐かしいです。(ほっとんど一緒のつくりなので)

「うわぁ~、あの小さい箒で部屋掃除のときチ〇毛集めてたな~」

「テレビの近くの席になったやつがリモコン係りやったな~」

「雑巾部屋に干しても生乾きの臭いがきつかったな~」

とか。


そして動作のスピード。

「バシッ!!」と決まるわけですよ。

点呼の号令なんかもみんな何いってるか分からないぐらいに叫びまくり。行進のときは足踏みをそろえて、手は肩の高さまで挙げる!なんてのは当たり前。指はまっすぐ伸ばし、とにかく「行進ロボット」と化すわけです。

刑務官の号令は「左っ!右っ!」のハズなのに「タリッ!イッ!」にしか聞こえないし、点呼も奇数は「ケツッ!」で偶数は「マン!」で終わるのかも意味不明。だけどそんなことは気にしちゃいられない!

行進 自衛隊
(※正に「自衛隊バリ」でした。)


後はテレビ!!

その頃はどのマンガや雑誌を買っても「AKB!AKB!!のフライングゲット状態」なわけです。

逮捕される前は全くAKBに興味のなかった自分。留置場でやたらと詳しくなったものの、全ては写真などの「静止画」。初めてテレビでメンバーが動いているのをみたときは、「AKBって動くんや…。てか、この人こんな声やったんや。」って少し感動しましたね。



あっ、そうそう。

「で、肝心の分類センターメンバーはどうだったの?」って話ですね。


結論からいうと、


「意外とふつう」


でした。

たしかに「俺はワルでよ~」みたいな輩もいましたよ。超絶うっとうしい感じの。

だけどね、分類センターでの生活っていうのは「最終移送先に直接影響する」んです。素行が悪過ぎると下手したら「累犯刑務所」に送られてしまう可能性だってある。(僕が知っている範囲でも実際にいました。)

だから余計なトラブルには巻き込まれたくない事この上なし!!

じゃあどうするか?


そこはもう得意技の「合わせのイノシシ」発動ですわ。


「そうやね~そうやね~。」「ふんふん。」「へぇ~、すごいね~。」のエンドレスリピート。

何より「ケンカしたくない」し、「ケンカになってもケンカしたことない自分は勝てない」し、で至ったのがこの方法!

そうやっとけばよっぽどじゃない限り変な絡み方はしてこない。他のメンバーも自分と同じ考えの人が多かったように思います。


色々書いてきましたが、この分類センターでの雑居の生活を振りかってみて、独居と比較してのメリットとデメリットをざっくり挙げておこうかと。



【メリット】

①話ができる

…「どの本が面白い」とか「今までどのにいた?出身は?」とかから始まり、「AKBのどのメンバーがカワイイと思う?」「てか有吉のラジオくそ面白くない?!」なんていう他愛も無い会話、さらには「ぶっちゃけオ〇ニーどうしてんの?」というかなり突っ込んだ会話まで。気分的にすごく楽になりましたね。他には「差し入れどうしてる?」とか「ユニクロの衣類は未決のときに入れてもらってたら、懲役でも使えるぞ!」なんていう受刑者ならではの会話もあったり。(・∀・)


②将棋・囲碁ができる

…初めての将棋との出逢い。最初は「何このややこしいルール!」とか思ってたんですけど、ルールが分かって定石を知るとめっちゃハマりましたね。今でもスマホには将棋アプリをダウンロードしてますし!「みんな将棋を極めたら囲碁にいく」ってある刑務官が言ってましたけど、自分はずっと将棋一辺倒でした。


③物の貸し借りができる

…本当はダメです!!だけど、バンバンやってましたね。特に「貸し借り」。「あっ、その本面白そう!貸してや~。」→「いいよ~。」みたいな。最初は「どうやって断ろうかなぁ~…」とか思ってたんですけど、下手に断るよりもこっちの方がええわ、ってことで思いっきりやってましたね。てか、巡回中の刑務官にその現場を抑えられない限り、読み終わった後に持ち主の本棚に戻しておけば基本は大丈夫。自分はやってなかったですけど、食べ物(食べきれん、嫌いだから)を他の人に譲ってる人もいました。そういや高松刑務所には「ヌード写真集とエロ漫画はOKだけどエロ本はNG」なんていう訳の分からないルールが存在してましたね…。所長の趣味?(; ̄Д ̄)


【デメリット】

①気疲れする

…これに尽きる。土日なんて同じ部屋で24時間ずっと一緒なわけですから。仲がいいメンバーが集まり、雰囲気がよかったらいいですよ。割と楽しめるし。けど部屋の中で「俺あいつのこと嫌いだから」とかなったらもう最悪。派閥争いというか、主導権の握り合いというか…「クッソどーーーーでもいいこと」を始めちゃうんで、周りからしたらいい迷惑でしかない。自分はそれまで独居に慣れていたので尚更でしたね。


②いびき・歯ぎしり

…何気にかなりの苦痛。だって注意しようにも「トラブルには巻き込まれた無くない」うえに「注意しても治るものでもない」わけで…。とるべき手段は1つ、そう、「我慢」ですね。人生で初めて歯ぎしりを聞いた日は苦痛で発狂しそうになりました。これが結構トラブルの元になったりも…。「あいつイビキうるさくねぇ?」みたいな感じで。


③上下関係と悪い思考の伝染

…基本は「早く入ってきた奴が偉い」みたいな風習もありました。自分は実際には体験していないですが、「シャリ上げ」(飯をカツアゲする)なんてこともあったようで…。雑居ならではの弊害といえるかも。また、「類は友を呼ぶ」「朱に交われば赤くなる」の言葉のように、「くっだらない会話や行動ばっかりしている人間」とずっと一緒にいたら、自分も知らず知らずの内に「くっだらない人間」になっちゃいます。



で、「結局雑居と独居どっちがよかったの?」て聞かれれば、僕は間違い無く


「1000%独居」


と答えますね。

そもそも雑居で過ごした期間が受刑生活の2割にも満たないのもあるとは思うんですが、それでもこの結論は変わらないと思います。


何より「どうでもいい人間関係に無駄なエネルギーと時間を使わなくてすむ」のが一番大きい。


特に自分は「読書」という日課もあったので。



そんなこんなで何とか雑居で「THE 刑務所な日々」をスタートさせたイノシシ。


しかし!


ここからまさかの展開が?


待ち受けていたのは「たらい回しの日々」だった…。



(続く)