「イノシシ獄中日記⑩」


衝撃の数々をくぐり抜け、ようやく一段落。

ここから島根あさひの「考査期間」が始まりました。

この期間は全部3週間。意味合いとしては

「アンケートや面接、作業を通してその受刑者の適性を見抜き、配属工場を決定するための期間」
「その施設の生活リズムに慣れるための期間」
「その施設の基本方針を教える期間」

何かが挙げられます。


そこで僕はある出逢いを果たすんです。

それが、

映画「ライファーズ」(下記は予告編)との出逢い。




島根あさひでは考査期間に教育の一環としてこの映画を視聴するんですが…

この映画を観たとき、僕は直感的に


「これだっ!!」Σ(・ω・ノ)ノ


と感じました。

それまで自分は「罪を償う」ことに関してあれやこれやと考えてきたわけです。

「刑期終了したらOK?」
「とはいえ前科は一生つきまとうしな…。じゃあ逆にそれが活かせるような生き方をしていきたいな。」
「自分が与えたマイナス以上のプラスの影響を与えるにはどうしたらいいんやろうか」
「う~ん、一応の結論は出たものの、具体的なイメージが湧かんな~」

とか。

(参考記事:【定義は】「罪を償う」とはどういうことか【人それぞれ】

そんな自分に「これからの生き方に対しての具体的なイメージ」を抱かせてくれたのがこの「ライファーズ」でした。

予告篇に目を通してもらえたら分かると思いますが、

「ライファーズ」=「終身刑受刑者」

なんです。

どんなことをしてるの?って話なんですけど、

ざっくり言うと、

「元犯罪者や現役受刑者自身が、その体験を他の元犯罪者や元受刑者に共有し、更生を促していく」

というプログラムです。

僕が思うに、この作品の特徴は主に2点。



①当事者が当事者を救うということ

それまでの僕の常識を覆してくれました。

今の犯罪者、受刑者更生プログラムの根本的な課題の1つに、

「当事者意識の薄さ」

があると思うんです。

なんでそれが起こるかっていうと、

「犯罪を犯したことの無い人」(非当事者)が「犯罪を犯した人」(当事者)を更生させる、という構図

が最大の原因。

ぶっちゃけ言うと、

これらの「犯罪を犯したことの無い人(非当事者)」の言葉って、「犯罪を犯した人」(当事者)からすると「心に響かない」んですね。

何も更生や支援に関わってくれている人たちがいかん!とかそういうことじゃありませんよっ!

すごく乱暴で拗ねた言い方をすると、

「どうせお前らには俺の気持ちなんて分からんやろ。」という気持ちがどうしても出てきちゃうんです。

これは隠してもしょうがないし、当たり前の感情かと。

言い換えると、

「あなた達は間違っています。なので道を踏み外しました。だからこういった問題点が挙げられます。なので、私たちがこのように更生させていきます」感をどうしても感じざるおえません。

ご高説というか、上からモノを言われているというか。「見えない壁」を感じちゃうんです。(自分で勝手につくっているだけかもしれませんけど…)

刑務官にしてもそう、民間の支援員にしてもそう。全員が「これまで罪を犯したことの無い人」です。

当たり前っちゃ当たり前なんですけどね。

だから、どうしても説得力に欠ける…。素直に聞き入れるのことが難しい…。

「甘すぎ!」「ひねくれすぎ!」「助けてくれるだけありがたいと思え!」

たしかに。

「社会の大多数が犯罪を犯したことの無い人」なので、周囲の理解は絶対に必要ですし、理解されるように努めていかなくてはならないは当然のこと。

ただ、「正直、どう感じるか?」の所でいうと、これが僕の率直な気持ちです。


なので、この映画を観たときはそれはそれは本当に「ビビビッ!!」っときました。

「できるやんっ!!」
「これやんっ!!」
「元犯罪者がその経験を隠さず、なおかつ社会のために活かせる最高の方法やんっ!!」

と。

「あなは達は間違った人間なんだから、こうしなさいっ!」

ではなく、

「俺も間違ったし、これからも間違うかもしれない。だけど、少しずつ一緒に歩いていかない?」

って言われてる気がしたんです。そんな親近感を強く覚えたんです。

この点は本当に自分の中で大きな影響を与えてくれました。



②終身刑受刑者が更生するということ

先にも述べましたが、「ライファーズ」=「終身刑受刑者」です。

ということは、「かなりの凶悪犯罪を犯した人」ということになりますよね。

傷害致死、強盗殺人、連続放火、等々。前科が100件以上なんていう人も作中には出てきます。

「そんな人間は絶対更生しない」と僕はそれまで思ってきました。

だけど、

「もしかしたら、そんなことはないんじゃない?」とこの映画を観終わった後に思ったんです。

今でも「更生する犯罪者は少数派」であるという考えは変わりません。

だけど一方で、「それは環境や適切なプログラムを施していないだけかもしれない」という考えもあり。

島根あさひのオリエンテーションでも言われたんですが、

「刑務所は初犯が大事。3回以上刑務所に入った者は、その後90%以上の確率でもう一回刑務所に入る」

そうです。(※関連リンク 「平成26年度版 犯罪白書」

だから、

「もうドツボにハマった人間はそこから抜け出せない」

という考え方が数字から見ても明らかなんですね。

だけど、この「ライファーズ」はその考えの真逆を行ってるんです。

これは本当に衝撃的でした。

価値観ぶっ壊されました。

それに費やす労力やエネルギーは大変なものかとは思いますけど…。



以上がこの作品の大きな特徴かと。

ちなみに現在この映画はDVDで販売していないようで、「上映会を依頼する」という形をとっているようです。
(※詳細は監督の坂上香さんが代表をつとめている団体のHPへ⇒アウトオブフレーム

また、このプログラムの詳しい事例や内容を知りたい方は、最近書籍化された本をおススメします。

ライファーズ 罪に向きあう
坂上 香
みすず書房
2012-08-21




島根あさひではこのプログラムのやり方を参考にしていて、他の刑務所には無い「グループワーク」も基礎教育の一環として受刑者全員が受けるようになっています。これは本当に良いこと。

もちろん、本家の「アミティ」(ライファーズが運営する当事者団体)を含め、良い所ばかりでなく課題も多々あるようですが、こういった教育は全国に広がっていって欲しいものです!!

「世界一周」では是非この団体に数週間は突撃取材~滞在して、自分でその実際に経験をしてみたいと思います。


それでは、今日はこの辺で!イノシシでした!