【イノシシ獄中日記⑪】


~引き続き考査期間~


恵まれた施設に「ライファーズ」との出逢い。

何という幸運。

そんな日々を噛みしめておったイノシシ。


考査期間では色々なオリエンテーションが行われます。この施設のルールについてや、物品の貸与や購入、さらには再犯の状況等。

ここでまた「もやもやとした違和感」というか、「(最先端の)PFI刑務所ならではの課題」というものが見えてきまして…。

一言で表現すると、


「この施設の方針は官(=国。刑務官)なの?民(=民間。支援員)なの?どっちなの?!」


です。

これまでの書いてきたとおり、この施設は「PFI」という「半分国、半分民間が運営」という手法をとっています。なので、国の刑務官もいれば民間の支援員もいる。

その他にもこの施設の特徴として「教育」に力をいれています。

ていうか、僕があれこれ説明するより、センターのHPを見てもらった方がはやそうですね(^_^.)


なので下記にバッスリ引用しました。(島根あさひ社会復帰促進センターHP
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再び罪を犯すことなく、自他を傷つけない生き方を


島根あさひ社会復帰促進センターは、受刑者の再犯防止を最優先課題としてさまざまな処遇に取り組みます。
地域の自然、産業、文化に力を借りて、出所後の就労面での有効な支援となる各種作業・職業訓練、犯罪行動の変化を徹底して促す教育プログラム、出所後の帰住環境への働きかけなどを実施していきます。

■受刑者処遇の流れ

入所から出所までを、分類部門と教育部門とが有機的に連携し、アセスメントとケア、リハビリテーションを統合して取り組みます。
また、島根あさひ社会復帰促進センターにおいて独自に開発された「分類事務支援システム」により、受刑者の各種データがリンクされ職員間の情報共有がはかられます。

受刑者処遇の流れ

■作業・職業訓練

刑務作業の確保に当たっては、刑務作業の仕組みを地域活性化に生かし、また地域の力を借りながら継続的に作業を提供する体制を整えることを目的としております。

また、島根あさひ社会復帰促進センターでは、四季を感じ自然に親しむ心をかん養するため、農林水産業を実施することとしております。
具体的には、施設内の作業としてバラのハウス栽培を実施します。
施設外の作業としては、新開団地での農作業、地元梨園での援農等を実施することとしています。
新開団地での農作業は、浜田市が所有する農業団地である新開団地の一部を借り受け、受刑者30名程度で、茶葉栽培、野菜のハウス栽培及び桑の有機栽培を地元の営農者から指導のもと行うこととしています。

さらに特化ユニットの受刑者向けの作業として、地元の伝統芸能である神楽の面作りや、伝統工芸品である石州和紙や石見焼きの陶器作りなどを、地元の福祉会や和紙工房、窯元の協力を得て実施することとしています。


職業訓練については、すべての受刑者が受講する基礎科目として、ビジネスの基礎である商取引・簿記の基礎知識をRPGによって習得する「ビジネス基礎」や、就職に必要な基礎的なITスキルを習得する「PC基礎」などの科目があります。
また専門科目としては、浜田ビューティカレッジを運営する学校法人 白蓮学園が本センター内に理容の各種学校を設置し、理容師資格の習得に必要な知識・技能を身につけさせる「理容師養成」。また、ホームヘルパー2級の取得を目指す「介護」、「医療事務」、「パン職人養成」、「PC上級」、「デジタルコンテンツ編集」等を実施することとしています。
「デジタルコンテンツ編集」については、労働需要の高いホームページ用映像コンテンツや教育関連ビデオコンテンツ等の映像編集に必要な知識、技能を身につけるものであり、産業技術大学院大学が教材開発を行うとともに、指導にあたる講師の養成を行うという産学官連携による画期的なプログラムです。


園芸療法農園園芸療法農園

石見神楽面づくり(イメージ)石見神楽面づくり(イメージ)

新開団地新開団地

PC教室PC教室

理容理容

パン工場パン工場

■教育

欧米で再犯率の低下が実証されているプログラムを導入するとともに、島根あさひ社会復帰促進センター独自のプログラムを展開します。
施設環境全体を回復、更生への手段とみなし、生活全体を学びの場とする「回復(治療)共同体」、犯罪行為につながる思考や感情、その背景にある価値観や構えをターゲットとして、効果的に変化を促進する「認知行動療法」、社会の一員であることを意識し、加害行為の責任を引き受ける力を養う「修復的司法」の考え方を教育の3つの柱にすえ、受刑者の犯罪行動の変化や社会的態度の変化を目指します。

教育の3本柱

■社会貢献

社会貢献的な意義のある教育活動の実施を通じて、受刑者にしょく罪の気持ちを育ませ、コミュニティの一員として社会の役に立ちたいと思わせることは、受刑者が社会復帰する上で非常に意義のあることだと考えます。
そこで、島根あさひ社会復帰促進センターでは、日本盲導犬協会の協力を得て「盲導犬パピー育成プログラム」を実施することとしています。このプログラムは、受刑者が盲導犬の候補犬となる子犬(パピー)を生後60日から1歳になるまでの約10箇月間育てるものです。プログラムに参加する受刑者は、24時間子犬と生活を共にし、えさやり、運動等の世話をしながら、トイレトレーニングを始めとするしつけをするとともに、人間社会のルールを理解させ、子犬が人間と信頼関係を築きあげることができるようにします。本プログラムを通じて、受刑者に生命を慈しむ心をかん養させ、社会に貢献できる喜びを体験させることを目的としています。
このほか、点字点訳・音訳作業も実施することとしています。

盲導犬パピー盲導犬パピー

点字点訳点字点訳

音訳音訳

■特化ユニット

身体的、知的・精神的に障害者をもつ受刑者に対しては、作業療法や理学療法を実施するほか、集団精神療法、SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)、アサーショントレーニング、内省プログラム等、さまざまなプログラムを受刑者の特性に応じて実施します。

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以上!

これだけ見ると「うわぁ~めっちゃ進んでるな~」とか「全く新しい日本の刑務所のカタチだ!」なんて思われそうですね。

だけど、

「実際はそんなことありません。」


以下の言葉は僕が実際にオリエンテーション、もしくは島根あさひで受刑生活をしているときに聞いたこともの。


「この施設は本当に甘っちょろい、優し~い施設やからの~」(by刑務官)

「ここの教育プログラムなんて、支援員のオ〇ニーって思ってる奴だっているんだろ?」(by刑務官)

「お前らなんて、累犯施設にいったらボッコボコじゃけえのぉ」(by刑務官)

「本当に”教育”とか意味あんのか?」(by刑務官)


……。


何か、「普通の刑務所の方が”偉い”」とか「累犯の方がすごい」、さらには「教育なんて意味無い」なんて感じのことを刑務官が平然と言ってるわけですよ。マジで。

ここの施設は職種によって業務の内容が分かれていて、

・「刑務官」が「作業監督」
・「刑務官」が「居室での生活指導」
・「民間の支援員」が「教育プログラム」

をそれぞれ担当しています。

受刑生活の90%以上は「作業と居室生活」

そこを担当しているのは「国=刑務官」

じゃあ、社会復帰促進センター(PFI刑務所)の刑務官は、他の一般刑務所と違って「教育プログラム」に理解があるのか?って話。

結論から言うと、「刑務官の態度や言動」は他の一般刑務所と何ら変わりません。

繰り返しになりますが、受刑生活の90%が「刑務官が担当する作業と居室生活」で占められているわけです。

だから、

せっかく民間の支援員があれこれ「教育プログラム」を施したとしても、刑務官(従来のやり方)に打ち消されるんです。

ちなみにこれは本当に僕の独断と偏見なんですが、

刑務官は民間の支援員をナメている人が多い

と思います。

「どうせこいつらを更生するなんて無理だろ?」とか、何か問題やトラブルがあると「ほれみたことか!」的な雰囲気をめっちゃ出してきますからね。

民間の支援員は受刑者に対しても敬語ですし、受刑者側も支援員に対して敬語で接します。

だけど、国の刑務官は受刑者に対して完全なる命令口調で(ごく稀に違う人もいますが)、受刑者側は刑務官に対しては敬語。

なので受刑者からすると「自主性を促す支援員」と「管理して押さえつける刑務官」との板挟み状態が生じるわけです。

で、そうなった受刑者はどうなるかというと、ほとんどの場合(主観です)

「管理して押さえつける刑務官」の言うことを優先して聞くようになります。

だって、優遇措置(買える物品が増えたり、お菓子を食べれ回数が増えたりする制度)や工場内での作業に対して権限をもっているのは刑務官ですからね。

なので、

受刑者にも支援員をナメている人が多い

と思います。

「まあ、適当に流しとけばいいか~」とか、「支援員が受刑者を懲罰にするとか滅多にないやろ~」とかね。口の聞き方だって、刑務官と比べると明らかに「なぁなぁ」。(あえて良く言うとすれば「距離が近い」?)

こんな状況が続いた結果、今の島根あさひは開所当時よりもホールに出る自由時間は減り、囲碁や将棋ができる時間も減り、

どんどんと一般刑務所と変わらない状況に近づいて行きつつあります。

これって本っ当に勿体ないですよね…。取り組み自体は素晴らしいのに上手く機能していない現状…。


こうなった背景には他にも色々と原因があるようで。

島根あさひは開所当時に受刑者の人数を確保するために他の一般刑務所から大量に受刑者を移送させたらしいんです。

で、そこでどういうことが起こったかというと…

「一般刑務所から来た人達がむちゃくちゃやった」らしいんです。

物品の不正授受(やりとり)は当たり前、みたいな状況。

「管理して押さえつけられる生活」から「多少なりとも自由のある生活」に環境が変化してタガが外れちゃったんでしょうか…。それまで「マトモな教育プログラムを受けたことの無い人達」だったので、それは尚更だったかもしれません(僕自身聞いた話なのであんまり断言はできませんが。)


こういう背景もあって、刑務官の「ほら見たことかっ!」「教育なんて意味ねぇよ!」の感情(勢力)がどんどんと大きくなっているんじゃないでしょうか。

だけど、それって本来の取り組みから大きくズレていってしまっているわけで…


もうね、「国」と「民間」、一回腹割ってガッツリやり合ったったらいいと思うんですよ。そして方向性の意志統一をするべき。

じゃないと、このままじゃせっかくの環境が台無し。

建物だけキレイな「中途半端な施設」になっちゃいます。


ちなみに僕は「今までの一般刑務所やり方」よりも「民間主導のやり方」の方が断然いいと思います。それは実体験を通してそう感じました。

教育プログラムだけじゃなく、「作業」や「居室での生活」、さらには職員(刑務官や民間の支援員ともに)の人事制度も含め「徹底的に」改めないとこのままズルズル行くのは目に見えてる。

(参考記事①:刑務所は犯罪者「養成」施設?
(参考記事②:【カン違い】仕事のできない刑務官が多い理由【茹でガエル養成所】)


刑務官にもしっかりとした考え方を持って仕事に取り組まれている人はいます。
支援員にも情熱を持って必死に取り組まれている人はいます。

そういう人がどんどん消耗し、「擦れて」いってしまうのが今の環境。
そういう人が報われる、評価される、活きる環境をつくっていってほしいです。


出所した1人の元受刑者が、無責任にも偉そうにほざいてみました。


それでは、今日はこの辺で!イノシシでしたっ!!