PP_hanyoukihandoru




就職。


元受刑者の出所後に立ちはだかる最初にして最大の壁。


(参考記事)
「元受刑者の就職 〜経歴詐称は避けれれない?!〜」


「定職の有無で再犯率が5倍も変わる。」というのは有名な話で…

(参考リンク)
・ 「犯罪白書」


刑務所側もその問題点はもちろんわかっています。 

そんな出所後の就職に向けて、「少しでもためになる勉強しよう!」という意味で実施されているのが本日のテーマである「職業訓練」

今日は

「そもそも職業訓練って何?どんなのがあるの?」
「やってみてどう?今実際役に立ってる?」
「何が問題?改善案は?」

なんていうことを、思ったままに書きなぐって行きます。


①職業訓練とは?

OZP_tukaihurushitahanma1188


職業訓練(しょくぎょうくんれん)とは、懲役受刑者に対して、職業に関する免許資格を取得させたり、職業に必要な知識や技能を習得させることを目的とする訓練である。刑事施設の長が懲役受刑者ごとに指定する作業の一つである。

(Wikipediaより引用)
 
付け加えていうなら、免許や資格といってもほとんどが民間団体の試験です。(理容師などは国家資格)

また、施設によってその内容は千差万別。内容によっては「他施設の複数刑務所」まで応募をかけることもあり、職業訓練ための服役していた刑務所を離れ「県外の刑務所に移送」となることもあります。



②どんなものがあるの?

PPC_NCsenbannopaneru


これまたWikipediaからですが…


園芸科、造園科、塑性加工科(板金科)、溶接科、構造物鉄工科、機械加工科(機械科)、精密加工科、機械製図科、電子機器科、電気機器科、コンピュータ制御科(数値制御機械科)、電気工事科、自動車整備科、自動車車体整備科、製材機械整備科、建設機械整備科、農業機械整備科、縫製機械整備科、織布科、織機調整科、染色科、ニット科、洋裁科、縫製科、和裁科、寝具科、木工科、紙器製造科、製版科、印刷科、製本科、プラスチック製品成型科、鞄製造科、ガラス製品製造科、石材加工科、製麺科、パン・菓子製造科、水産加工科、発酵製品製造業、木造建築科、枠組み壁建築科、とび科、鉄筋コンクリート施工科、プレハブ建築科、建築設計科、屋根施工科、スレート施工科、建築板金科、防水施工科、サッシ・ガラス施工科、畳科、インテリア・サービス科、床仕上施工科、表具科、左官・タイル施工科、ブロック施工科、配管科、住宅設備機器科、土木施工科、測量・設計科、ビル管理科、ボイラー運転科、クレーン運転科、建設機械運転科、木材工芸科、漆器科、貴金属・宝石科、金属塗装科、木工塗装科、建築塗装科、広告美術科、工業デザイン科、商業デザイン科、義肢・装具科、経理事務科、一般事務科、OA事務科、介護サービス科、理容科、美容科、OAシステム科、ソフトウェア管理科(情報処理科)、データベース管理科、プログラム設計科、システム設計科、データベース設計科、陶磁器製造科、竹工芸科
 

多っ!

こんなにあったんですね…。


③職業訓練を受講できる受刑者はどれぐらいいるの?

PAK86_codeing20140517


島根あさひの場合でいえば、刑期の中で最低一度は職業訓練を受講することが推奨されています。

というか、「社会復帰促進センター」は他の一般刑務所に比べて職業訓練を受講できる機会はかなり恵まれています。

(参考リンク)
「島根あさひ社会復帰促進センターHP」


しかし、一般の刑務所で「職業訓練」というとかなりの狭き門らしく…。多分、「懲役生活の全てを刑務作業で過ごす」みたいな人が大半なんでしょう。


そんな、「狭き門をくぐり抜け、選ばれた者が行く」ということが大前提の職業訓練。


果たしてその実態は!?てな話ですよね。

こんな話は新聞やニュースで「成功事例だけが上辺をサラッと」紹介されてるぐらいですから。




④「実際役に立ったのか?」職業訓練を振り返って。

PAK58_MBAkatakata



一応念のため言っておきますが,この記事は

「僕が職業訓練を受けて個人的に感じたこと」

です。

なので

「全体的にはあまり参考にならない体験談」

なのかもしれません。


しかし、裏を返せば「日本で進んでいる刑務所の職業訓練効果がどれだけでているのか」と見方を変えると面白い発見があるのかな、と。


ちなみに僕は「販売士3級」「医療事務管理士」「データベース検定2級(Microsoft Access)」の3つの職業訓練を受講し、資格を取得ました。


それでは、振り返っていきます。



(1)そもそも訓練生はその職業につく気はあるのか?


いきなり根本的な問題から。

結論からいうと、


ないです。(笑)


思わず(笑)とか入れちゃいましたけど、これは本当のこと。もしかしたら本気でそう思っている人もいたのかもしれませんが…。

例えば、「刑務所で手に職を!」の代名詞といえば「理容師免許」。

島根にもありましたが、ここは2年ぐらい座学と実技を行い国家試験を受けます。自分自身は受けたことありませんが、そんな「理容科」の人たちでも話を聞くと大半は「ただ単なる暇つぶし」みたいな感じでした。

う〜ん…。

他にも「パン製作」の職業訓練もあったんですが、そこはめちゃくちゃ人気なんですよ。募集の告知が出る度にそれ以上の応募者が集まります。

でも、理由は「将来はパン屋さんになりたい!」っていうものではなく、「ただ単に試食でパンが食えるから」とかね…。



(2)じゃあなんで職業訓練に行くの?

1:刑務作業よりはマシだと思って行く。

僕です。

「出所後、何の役にも立たないと容易に想像できる作業をひたすら続ける日々」これが懲役です。中にはもしかしたら役に立つものもあるかもしれませんが、間違いなく95%以上は役に立ちません。

僕は「何の意味も無い刑務作業するぐらいなら少しでも頭使った方がマシ」との気持ちから、出せる限りの職業訓練の希望を出していました。


2:刑務所作業をサボりたい。

結構いましたね。

職業訓練には「刑務作業したくね〜」みたいな人がいるんですよ。しかもかなり数。「刑務作業をサボりたいがために職業訓練に行く」なんていう意味不明な事態が起きていたり…。

「刑務作業したくないから、とりあず人気が無くて募集が通りそうな職業訓練来ました!」とか自己紹介で言ってる人も。

おいおい…。

中には「夏は暑いから、クーラーついてるパソコン系の職業訓練行こうかな〜」なんていう不届きな輩もいたり。先に記した「パン食いたい」とか「単なる暇つぶし」とかもこの類。



理由は主にこの2つだと思います。

悲しいことですが、半数以上の動機が「その職に!手に職を!少しでも知識を!」なんていう考えでなく「刑務作業が嫌だから」なんていうのが僕が目にした実態です。



(3)果たして職業訓練は出所後の役に立ったのか?


立ってません。


あくまで僕の場合、ですが。

そもそも「刑務所で取れるような資格だけで食べていけるはずがない」という動かぬ現実があります。

島根あさひで一応「一番難しい職業訓練」とされる「医療事務科」でも出所後求人誌を見れば「1日8時間、週5日勤務で月給13万」とか。時給に換算すると大体700円〜800円…。これにプラスで「前科」。中々厳しいですね。

正直、これなら経歴詐称してコンビニで深夜バイトをした方がいくらか稼げます。


「販売士3級」なんて言っちゃ悪いですけど、小売業の人が「ちょっと基本的な勉強するときに使うための資格」ぐらいの感覚です。というか、販売士の資格ビデオなんて「中小企業診断士」が解説してますからね。「おいおい販売士どこ行った!」みたいな。まあ、その程度の資格ということで…。


データベース検定は「自分でパソコンを使っている人がもう少し詳しく知りたいと思ったら受けるレベル」。本当はエクセルとワードの方に行きたかったんですが、時期的に行くことができず…。ショートカットキーとか入力作業の裏技的な部分は少し役に立ってます。


他にも介護系の職業訓練で「ホームヘルパー3級」がありましたが、その上位ランクである同じ介護系の国家資格「介護福祉士」(専門学校に2年ぐらい通ってとるもの)でさえ「年収200〜300万」ぐらいがボリュームゾーン。


就職には資格それ自体では全くと言っていいほど使えないが、自分の知識の足しにはなる程度のもの。
=職業訓練。



これが、現実。



(4)職業訓練に意味はないのか?課題と改善案

となると、「職業訓練なんてやめてまえ!」ってなりますよね。

たしかに。


でも、僕は刑務作業よりははるかに意味があると思います



一日中ひたすら「紙折り」したり「検品作業」したりしても何の意味も無いですから。

「受刑者に精神的苦痛を与える」のが目的であれば、それはそれで一定の効果があるのかもしれません。(少なくとも僕にはありました。)

ただ、刑務所という施設はそういった「懲罰としての作業」に加えて「更生」を目的として存在するもの。

であれば「出所後の就職の一助」として職業訓練は必要なわけです。

「職業訓練という考え方そのもの」に問題があるのではなく、「現在の職業訓練という仕組み」に問題がある、ということです。



《問題点1》無駄な資格、職業訓練の存在。

島根あさひを例に出すと、「盲導犬プログラム」とか「点訳プログラム」とかの「ボランティア系」のもの。(正確にいいばこれらは「職業訓練」ではないですど)たしかに取り組みとしては素晴らしいとは思いますが、「出所後の実用性」の観点から捉えるとその効果は全く期待できません。実際にあれらのプログラムで「改心しました!更生しました!」なんて人、見た事ないです。あと、前記した「パン」とか。予算を他に回しましょう。

「元受刑者の就職」について施設側もあれこれ考えているとは思います。

待遇が決していいとは言えないものの雇用人数が大きく比較的就職しやすいとされる「小売業」、高齢者社会で今後の人材不足が懸念される「介護」「医療」の業界、後継者不足が叫ばれて久しい「農業」といった業界の職業訓練があることにもそれが伺えます。

けど、もっと絞っていい。


《改善案1》「IT系」「肉体労働系」「人材不足系」の3本に絞る。

・「IT系」

この能力があれば、「前科をいちいち明かさず個人で稼げる可能性」がグンと上がると思うんですよ。

クラウドソーシング使って匿名で仕事受注して、そのサービスで実績を作ればいい。僕はプログラミングや画像・動画編集の職業訓練を持っと受けたかったですね…。


・「肉体労働系」

これはかなり現実的。

元鳶職や元大工、元左官の受刑者、結構いたんです。

しかも、そういった人たちは以前に働いて職場で雇ってもらえるという人が多い印象を受けました。

話を聞いてみると「職場にも前科持ちいた」なんてこともチラホラ。「逆に悪い仲間に染まるんじゃない?」という心配もあるにはありますが、全員が全員不真面目なわけなんてないし、「過去」じゃなくて「今」を見てくれるという意味ではいいんじゃないでしょうか。本人のやる気、実力次第。だったら、こういった「肉体労働系」の職業訓練をもっとやったらいいと思います。


・「人材不足系」

介護や農業などの、「人材不足」とされる業界をメインに。

「とにかく、人が欲しい!」という業界に特化した職業訓練。

決して待遇は良いとは言えませんが、「これからの少子高齢化社会」のことを考えると、「就職のハードル」は他職種に比べれ低いと思われます。



《問題点2》受刑者の質が低い。

正直、これはあります。

「医療事務」の試験なんて毎日あれだけ勉強してたら3ヶ月あれば(試験までは約3ヶ月)「絶対に受かるレベル」なんですよ。なのに30人いたら数人、多いときは10人以上が落ちることあるそうで…。よく言われる「どのレベルに基準を合わすか」の基準で言えば「最底辺」に基準を置いているのが現状です。

さらに言えば、「能力が無くてもやる気がある!」ならまだ救いはあります。しかし「能力もやる気も無い人」や「ただの暇つぶしで来ている人たち」ばかりになれば、いくら熱意のある講師でもやる気を削がれていくことは間違いないしょう…。


《改善案2》やる気の無い者はすぐに辞めて他の者がすぐに入れる仕組みの導入。

1週間もいれば分かりますよ。「やる気の無い暇つぶしで来ている人間」は。そんな人には速やかに辞めて頂きましょう。テストか何かの基準を設けて。そんな人に時間とお金と労力を費やすぐらいなら、やる気があって選考に漏れた人にチャンスを上げるべき。



《問題点3》講師の質

実はこちらにも問題があります。

訓練によってかなり差があるんですよね…。

講師の知識があいまいで「ん?質問の答え返って来てないけど…」ということあったり…。「ん?この資格、ちゃんと効率的にやったら2ヶ月でとれるやん。」と思うものでも4ヶ月以上かけて受験したり…。問題点2「受刑者の質」もあるとは思いますが、訓練のカリキュラムをもっと効率的にすれば質は断然あがると思います。予備知識ほぼゼロの自分が「くっそ効率悪いな。俺が教えた方が早いぞ。てか俺にカリキュラム作らせて!」と感じることが何度もあったぐらいなので。(ムラムラしすぎたので最後のレポート提出で具体的な方法まで記載して提案しました。)

ちなみにパソコン科の講師の方は教えるのが抜群に上手かったです。


《改善案3》標準、またはそれ以上の給与を払い「できる人」を雇う。もしくは元受刑者を講師として雇う。

どういった経緯で講師の選定をしているんか、講師がどれぐらい給料をもらってるのか、あるいはボランティアのなのか(それは無いと思うけど)分かりませんが、それなりの人を雇うにはそれなりの待遇が必要かと。

もちろん、「そんな人はすでに他に企業に就職している」という意見もあるでしょうが「一線を引退した技術職の人」や「薄給で働いている普通の仕事ができる人」はいるはず。

「刑務所の受刑者相手」という心理的ハードルは高い気もしますが、一度そこにお金をかけみた方がいいと思います。

あと、「元受刑者を講師として雇う」なんていう道をありじゃないかと。講師より上手く授業できる人、たくさんいると思います。これが実現されれば、元受刑者側からすれば「前科隠す必要無し」&「出所後の就労支援」、施設側からすれば「人材確保」で一石二鳥ならぬ一石三鳥ぐらいですね!


⑤まとめ

OZP_graindhibana1188


(1)職業訓練とは「出所後の就職に向けた刑務所での訓練」のこと。

(2)内容は施設によって異なり、様々なものがある。

(3)一般の刑務所において職業訓練は「狭き門」である。社会復帰促進センターは施設で「いくつもの職業訓練が受講できる」という意味で他の一般刑務所よりも恵まれている。

(4)しかし、「その資格・訓練で食べていこうとするものはほとんどいない」のが実態としてある。

(5)理由として、「刑務作業をサボりに来ている」「そもそも刑務所で取れる資格ではあまり就職の役には立たない」等が考えられる。

(6)それでも職業訓練は必要であり、問題なのは仕組み。

(7)課題として「実用性の低い訓練の存在」「受刑者の質」「講師の質」等が考えられる。

(8)改善案として「分野を絞る」「やる気のある者が評価される仕組みの導入」「講師の待遇改善、元受刑者の雇用」等が考えられる。




いやぁ〜、こうして読み返してみるとかなり偉そうなことを書いてますね。(汗)

実際に現場で働いて施設を運営している側の方や講師の方々すれば、僕の言ってることなんて「無責任な外野の野次」だとは思います。僕には想像もできない苦労や事情があるのかもしれません。いや、実際にあるんでしょう。

ただ、一元受刑者として職業訓練を振り返ってみた率直な感想が今日の記事です。

こういう記事を書けば書くほど「じゃあ俺は今何してるのか?」という問いが自分自身に突きつけられます。


僕が来年起業する際には、やはりこういった「自分が体験した世の中の不満を解決する」ものになると、おぼろげながら感じていたり…。

ともかく、今は「自分が感じる、必要なのに埋もれている情報」を発掘し発信していくのが自分の役目だと思ってこのブログを更新していきます。


それでは、この辺で。



けもの道をいこう。