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全ての物事は表裏一体。

 

長所は短所になり、短所は長所になる。

 

前回の記事ではサイコパスの「負」の側面を主にとりあげましたが、今回の記事ではその「負」の側面が「正」に変わる瞬間はあるのか?を軸に「サイコパスは人工的に作れるのか?」「サイコパスが多い職業ってあるの?」なんてことを以下の参考図書を元に書きなぐっていきます。


(前回の記事:「サイコパス」それは25人に1人いる「良心をもたない人たち」



サイコパス 秘められた能力
ケヴィン・ダットン
NHK出版
2013-04-23



 

①驚くべき観察力


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1970年代に女性35人の頭蓋骨をたたき割ったテッド・バンディは、生前のあるインタビューの最中、少年のような、いかにもアメリカ人らしい笑顔でこう言ったそうです。



いい被害者は歩き方で分かる。
 

怖っ…。
 

この証言を実際に確かめるために、ある学者が簡単な実験を行ったそうです。


(1)男子大学生47名に「サイコパス自己評価尺度」を受けてもらい、「高得点グループ(サイコパス度が高い)」と「低得点グループ(サイコパス度が低い)」に分類。

(2)次に別の参加者12名に歩き方をビデオにおさめ、以下の2つの質問に答えてもらう。
   1:過去に犯罪被害者になったことがるか?(はい/いいえ)
   2:「はい」と答えた人は被害にあったのはいつか?

(3)12名の歩き方の映像を、最初の47名に見てもらい、こう指示。「12名のカモにされやすさを1〜10で採点しなさい。」

 

この実験の結果は

「サイコパス度が高いグループの方が、犯罪被害者を歩き方を見ただけで当てる確率が高かった」

というバンディの発言を裏付けるものとなったようです。
 

これはいわば、サイコパスが「獲物」を瞬時に判断しているといえるわけで…。その観察力には驚きを隠せません。俗にいう「匂いを嗅ぎ取る」とでもいうんでしょうか…。


 

②圧倒的に合理的な判断

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これはハーバード白熱教室でおなじみのサンデル教授も引用していた有名な問い。

みなさん以下の状況なら、どういう判断を下しますか?



鉄道のトロッコが線路を猛スピードで走っている。

その先には5人の人間が線路に縛られていて逃げれない。

あなたは線路の上にかかる橋の上で、とても大柄な知らない男の後ろに立っている。

5人を救う唯一の方法は、知らない男を突き落とすことだ。

男は確実に死ぬだろう。

それでも大きな体がトロッコを止めるはずだ。

あなたは男を突き落とすべきだろうか。
 

単純に考えれば「5人の命と1人の命」の計算。

計算上では「5人の命を救う」方が合理的な判断。

 

しかし、この5人の命を救うために「自らの手で1人の人間の命を奪う」ことが普通の人間の判断を迷わせます。


「誰かを救うためとはいえ、全く罪のない人の命を奪うことはできない。」
「しかし、だからといってそのままにすれば5人の命は失われてしまう…」
「だからといって殺人を正当化できるのか?」
「この状況であれば、罪には問われないのかもしれない…」

等々…。
 

いわゆる「ジレンマ」ですね。
 

ただ、サイコパスにこのジレンマはありません。

一般の人間に比べ、サイコパスはこの問いにも非常に短い時間で答えを出します。

そう、


「まだたきひとつせず、まったく平然と大柄な男を端から突き落とす」


という答えを。

 


③その判断はどこから生まれるのか?

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前回の記事でも紹介しましたが、サイコパスの脳は一般人の脳に比べて情報の処理の仕方が特殊です。


言葉などの情報を処理する際、それが感情を伴うものであれば、通常は脳の扁桃体という感情を司る部分が反応します。

「愛してる。」とか「死ね。」とか。

こういった言葉を耳にするのはもちろん、目にするだけで人の感情が浮き沈みするのは、脳のこの部分が正常に働いているからなんです。

ただ、サイコパスの脳の部分の反応が皆無。


「愛している。」も「コンクリート」も「ただの言葉」として認識されるんです。




④サイコパスが多い職業・少ない職業

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サイコパスと一般人を大きく分かつ特徴として、「他人からどう思われようと全く気にしない」というものがあります。

「周囲の目」「倫理観」「相手の心情」そういったものは、

彼らの目的達成のためには「何ら支障となりません。」

もっとくだけた言い方をすれば、

「目的のためなら手段を選ばない」

ということです。

 

実はジョン・F・ケネディ、ビル・クリントン、セオドア・ルーズヴェルトといった歴代のアメリカ大統領にも「顕著なサイコパス的特性」が見られたという調査もあるようです。(彼らの伝記執筆者が、彼らの人格検査を取材や調査から浮き彫りになった行動様式を元に実施)。一国のトップともなれば、外野の些細な野次や中傷、タフな交渉などではビクともしない強靭な精神力が求められるため、言われてみると納得のような気も…。

 

そうなんです。サイコパスは連続殺人鬼にも、アメリカ大統領にもなりうるんです。

 

さらにいえば、殺人犯などを収容するイギリスの病院の収容者と、全米の200を超える経営陣に行った調査では、「経営陣の方がサイコパス的特性は高かった」との結果が出ているとのこと…。

この結果から、サイコパスがいかに「諸刃の剣」かが分かるかと。

 

イギリスのウェブ上で行った調査によると、サイコパス度が高い職業・低い職業は以下のような結果になったそうです。

 

(1)サイコパス度が高い職業
1:企業の最高経営責任者(CEO)
2:弁護士
3:報道関係(テレビ/ラジオ)
4:セールス
5:外科医
6:ジャーナリスト
7:警察官
8:聖職者
9:シェフ
10:公務員
 

(2)サイコパス度が低い職業
1:介護士
2:看護師
3:療法士
4:職人
5:美容師/スタイリスト
6:慈善活動家
7:教師
8:クリエイティブアーティスト
9:内科医
10:会計士

 

一概に「これだからこう!」とは言えませんし「何これ?」的な職業もありますが、割と「なるほど」と思えるような結果になったかと。

「サイコパス度が高い職業」でいえば、どんな状況においても冷静かつ合理的な判断が求められるCEO、感情ではな無く論理的に物事を組み立てることが要求される弁護士、危険な状況になることもあるジャーナリストや報道関係者。

たしかに「恐怖心の欠如」や「強靭な精神力」といったサイコパス的特性が、こういった職業では活きるのかもしれません。

一方で「サイコパス度が低い職業」の方は、「人と直接接する機会が多い」かつ「相手の心情を考えることが求められる」のが特徴かと。医療関係者が4/10を占めているのも頷けます。同じ医者でも「外科医」と「内科医」ではこんなにも活きる特性が違うんですね。
 

このランキング以外にも、特殊部隊や諜報機関のスパイなどには超優秀なサイコパスが多数いるそうです。かの有名な「007」のジェームズ・ボンドも、専門家からすれば「完全にサイコパス」だそうで…。まじかよ!
 

著者は、世の中で結果を出す人には「最適なサイコパス度」が備わっている、としています。それが高すぎても、低すぎてもいけない…。さらに、ある一定の状況下であれば、サイコパス的特性を発揮し最高の結果を出すサイコパスを「機能的サイコパス」と呼んでいます。この「機能的サイコパス」が世の中でいう「結果を出してる(成功している)サイコパス」であり、最適なサイコパス度から逸脱したものが道を踏み外し「無慈悲な凶悪犯罪者」となってしまうんでしょう…。

 



⑤サイコパスは人工的につくれる?

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先に述べたように、人間の感情には脳の「扁桃体」という部分が深く関わっています。


なんと著者はこの扁桃体に直接刺激を加えて、「人工的な擬似サイコパス体験」をしているんです!

 

効果自体は約1時間しか持続しないようですが、そのときの状況をこんな風に記しています。



自分が何を言おうと何をしようと、やましさ、良心の呵責、恥、遺憾、恐怖、に煩わされることなく、人生のドライブを楽しめるという感じだった。
 

著者はこの実験の前後で「悲惨な殺戮の映像」を見て脳や心拍数の状態を計測しています。

結果として、

実験前はその映像をみると「扁桃体が強く反応し、心拍数も増大、吐き気をもよおした」のですが、

実験後にまったく同じ映像をみても「扁桃体はほぼ反応せず、心拍数も安静時と同様。油断するとにやけるぐらい余裕で見れた」とのこと。

一時的にではありますが完全に「サイコパス」の状態になっています。

別の言葉で「自分が無敵であるような感覚」とも言っていました。

ちなみにこの実験、「サイコパスの脳を一時的に一般人の脳にする」みたいなことも一応できるそうで、そこら辺には大いに期待したいところです。

もはやこれからは「反省/更生」といった感情レベルの話ではなく、「脳レベルでの治療」が求められていくことと思います。

 

しかし、こういった新しい手法は、映画「カッコーの巣の上で」しかり過去にもロボトミー手術といった悪しき歴史があるため、慎重に進めていく必要はあると思います。


 


⑥まとめ

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・サイコパスには「人並み外れた観察力」や「周囲に左右されず合理的な判断を下せる」「恐怖心の欠如」といった特徴がある。
 

・それには脳の「扁桃体」という感情を司る部分が大きく関係している。
 

・これらの能力は職業によっては「才能」となりうる。
 

・サイコパス的特性にも振れ幅があり、それが「最適なサイコパス度」であるときは世間のいわゆる「成功者」となりえる。
 

・しかし、その振れ幅が高すぎると道を踏み外してしまう可能性がある。
 

・現在、一時的にではあるが「人工的にサイコパスをつくる/なくす」方法も存在する。
 

・今後はそういった「脳レベルでの治療」も一つの選択肢になってくると考えられる。



 

現在、犯罪者の更生っていうと、


「悪い所があるから犯罪を犯した。その悪い所を無くすのが更生。」


みたいな認識がると思うんです。僕自身いわゆる「更生プログラム」を受けていてそれを感じました。たしかに言ってることの意味は分かるし、一理はあるんですけど、


「そもそも反省できない、更生できない脳の持ち主(=サイコパス)」


を相手にしたとき、これってまったく意味をなさないと思うんです。もはや「脳レベルでの治療」や「その特性が良い方向に発揮できる環境設定」みたいな方向にしていかないと。

凶悪殺人犯にも、大統領にもなりえる、諸刃の剣。

まだまだ謎の多い存在ではありますが、世の中の凶悪犯罪を防ぐ手がかりのようなものが潜んでいる気がします。


それでは、この辺で。


けもの道をいこう。



サイコパス 秘められた能力
ケヴィン・ダットン
NHK出版
2013-04-23