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まだ、実感は湧かない。


昨日は最後の出社日だった。

いつも通りの出社。
いつも通りの仕事。
いつも通りの片付け。

これらが全て、明日からは無い。

全体の前での挨拶はあるかと思っていたけれど、それも無くあっけなく解散。

先週に送別会をしてもらったから、まあそんなモノなのかもしれない。

個人的にお祝いやプレゼントをくれた人もいた。

ありがたいね。本当に。

最近は1食250円以内で抑えていた食費。ちょっとだけ贅沢してみようかな。久しぶりに鶏肉以外が食えるぞ!って。


帰り際、一人一人に挨拶しながら「この人たちとはもう一生会うことはないのかもしれないのか」とボンヤリしながら思ったり。握手したその手はみんなゴツゴツしていて「仕事の手だ」と思ったり。

そして、いくつかの思い出がチラホラ顔を出したり。


「死ぬほどキツイ!」と聞いてたから、軍隊に入るつもりで入ったらマジで軍隊だったな。
刑務所内からずっと筋トレしてたし、ある程度体力には自信あったのに、最初は「覇気のないドン臭いおっさん」扱いされたな。
「THE肉体労働&3K」の仕事で自分のちっぽけなプライドは見るも無惨に打ち砕かれたな。
「顔面表出率2000%」の僕は「顔に出すなっ!」と何度も言われたな。(まったく治ってないけど)
刑務所の中では「ドブざらえでも何でもして仕事見つけるわ!」と息巻いていたけど文字通り本当にドブざらいもしたな。
夏場は3リットルは汗をかいて毎日一人土砂降り状態だったな。
理不尽なことに腹が立ったこともあったな。
「死ね」と自分でもよくわからない怒りを心の中で毒づきながら爆走したこともあったな。
腰は痛かったし、始めの半年ぐらいは指がずっと攣ってたな。


ここには、ここで働く人たちの人生があって、物語があった。


生活、家族、それぞれの大事なものを守るために。

みんな必死だ。

良くも悪くも、雑で荒い会社。50数年続くこの会社で、送別会を開いてもらったのはみんなが記憶している限りは僕だけで、円満退社も2人目らしい。

その事実は僕の中での微かな誇り。ほんの少し、自信も持てた。

やったど。



仕事から帰って、今の職場を紹介してくれた前の会社の社長に報告の電話をした。

受刑中に声をかけてくれ、出所した僕を雇ってくれた人。そして入社2ヶ月も経たないうちに「もっとお金を稼ぎたいから転職したい」という僕のワガママで失礼なお願いを親身になって聞いてくれた人。不採用の連続で転職活動がうまくいかなった僕に今の会社を紹介してくれた人。

恩人ってのは、こういう人ことを言うんだろう。

「この人の顔を潰したくない」

今の職場でそこまで追い込まれたことはないけれど、しんどいときや腹の立つときは頭にそれがあったから頑張れた。

ありがとうございます。


そして、その後は両親に電話した。


僕と両親は逮捕される前、ほとんど音信不通の関係。逮捕されてからようやく会話らしい会話ができるようになった。ずっと僕のことを影から支え、助けてくれている。

やっぱり、この人たちがいなかったら今よりもさらに卑屈になって塞ぎ込んでいたんだろうな。

誰よりもお世話になっている2人。

そんな2人に無事に円満退社の報告ができたことが少し誇らしかったし、節目で連絡を入れることができる関係になったことが嬉しかった。

ありがとう。



話は少し変わるけど、実は僕が人生で一番後悔しているのは事件のことじゃなかったりする。

もちろん、事件のこともそうだけど、今でもことあるごとに思い出す苦い思い出。


それは、新卒で入った会社の辞め方。


その会社に入る前(=学生のとき)から、仲間内で起業の準備をしていた。そして、僕が新卒で入社すると同時に創業。僕は昼間は会社、夜はその立ち上げと今考えてもかんなり無茶苦茶なスケジュールだった。

もちろん、それで上手くいくハズもなく‥。

昼に勤めている会社には遅刻、居眠り、当日欠勤のオンパレードで恐ろしいほどの迷惑をかけた。あの頃の僕を思い出すと、本当に「ただのクソ野郎」という言葉しか出てこない。個性、特徴、強み、そんなレベルの話じゃない。クビにならなかったのが不思議でならない。

そして、同僚や上司もそうだけど何より迷惑をかけたのは「顧客」の方々。

詳細は言えないけど、文字に書き起こすのすらも恥ずかしく申し訳ない。適当でクソみたいな対応ばかりしてきた。自分がされたら絶対にブチ切れるだろうし、学生のときには一番なりたくなかったタイプになっていた。

本当に、すみませんでした。

ここでどうこう言ってもあの人たちに伝わるはずもないし、あのときしたことが許されるわけでもないけど‥。


あのときからどれだけ成長しているかは分からない。だけど、少しだけは進んでるなと今回の退職で思えるようになったのは嬉しい。



明日からはたぶん月に数回の取材と、残りは家に引きこもってネットでカタカタお仕事の日々だろう。

久々にこんなオチも流れも無い記事を書いた。

今の僕の気持ちはサカナクションの「新宝島」にある一節がよく表してくれている。



このまま君を連れて行くと
丁寧、丁寧、丁寧に描くと
揺れたり震えたりした線で
丁寧、丁寧、丁寧に描くと決めていたよ

「君」は「僕自身」であり「読者の方々」。

自分の信念や考えが揺れたりすることもあると思う。
思わぬ場面や新しい出来事にビビって震えることもあると思う。

でも、丁寧に、丁寧に、丁寧に記事を書いて、描いていきたい。


見つけてみるか、新宝島。

けもの道をいこう。