昨日の前編ではデュオ結成のきっかけから、結成当時のエピソード、そして慰問コンサートにかける想いを伺いました。本日の後編では、その裏に隠された日々の積み重ね、そして今後の展望を聞かせていただきます。


慰問コンサートは儲からない

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(マネージャーの片山さん)

ーーーー活動の中心が慰問コンサートとなると「どうやって利益を出しているのだろう?」と率直な疑問が浮かびます。その辺りの事情を教えてきただけませんか?


片山:正直、まったく儲かりませんよ(笑)。今でこそ、こうした事務所もありますが、何度も窮地に陥ったことがあります。預金も底をついておにぎり1個だけで過ごした日もありましたよ。

井勝:ただ、いつも「もうダメだ」というときに必ず助けてくれる人が現れるんです。人生で一度や二度であれば分かるんですが、本当に何度助けてもらったかわかりません。そういった意味では、私たちは「持ってる」と思います。(笑)

片山:本当にそうなんです。ファンの方が送ってくれるので、ここ数年、お米は買ったことがないですね。当時は借金をしたこともあったし、ホテルのチェックインのときに残高不足でカードが使えないこともありました。でも、お米だけはあった。(笑)

北尾:あと、困るのが「ギャラのことを言ってしまう人」です。かなりの薄謝であっても、やる価値があれば何とか頑張ってオファーを受けます。けど、「自分たちは◯◯円でPaix2を呼べた」とその人が周りに言ってしまえば、それを聞いた周りは「◯◯円でPaix2は呼べる」と思ってしまうんです。何度かに一度ならいいですが、その金額が基準になってしまうと、正直食べていけません…。


社会的意義のある活動でも、やはり現実には辛い時期が度々あったようです。

「残高不足でカードが使えなかった」とは何ともリアルな話で…。僕自身、現在こうして取材費をいただきながらインタビュー記事を書いていますが、正直かなり厳しいです。謝礼を含めると、1人で行動していても数日で数万円を使ってしまうこともあります。それが3人となると、さらに厳しい状況であることは間違いありません。

しかも、そうした状況の中、薄謝で受けた仕事のギャラを広められる…。心が折れても不思議では無いでしょう。

ただ「今回こそは本当にもうダメだ」となる度に、誰か手を差し伸べてくれる人が現れるのは、それまでの地道な活動が評価されているということでしょう。「お米だけはあった」のエピソードは、いかにPaix2がファンから愛されているかを物語っています。


「手弁当の日々」を支えてくれたもの。

刑務所の慰問はほとんどが手弁当。にも関わらず、2人の他にマネージャーの片山さんも含めると3人での移動となり、食事代、ホテル代、ガソリン代などの出費はかさむ。さらに慰問を開催する側がコンサートに無知であると、音響代やステージ設営にかかる費用すら謝礼に含まれていないこともあるという。

ーーーーそういった日々を支えていたのは一体何だったんでしょうか?


井勝:活動を開始して1年目経った頃、元受刑者の方が手紙と花束を持ってきてくださったんです。そのときに直接感謝と励ましの言葉をいただき、「あぁ、自分たちのやってきたことは間違ってなかったんだ。」と自信を持って思えるようになりました。

北尾:最初に「15年」と言われたら絶対にやってなかったと思います。(笑)特に同じ業界の人は「そんなことして稼げるわけがない」なんて言われたりしましたし…。それでも、1回やって、1年続けて、また次の年も続けて…。そうやっていくうちに「いつの間にか15年経ってた」みたいな感覚ですね。

井勝:お金を中心に考えてやってたら、絶対に続いてなかったと思います。先ほど話した元受刑者の方の件など、そういった経験の積み重ねが非常に大きかったです。それらを通し、最初のうちは無かった「使命感」のようなものが徐々に芽生えてきて、それで続けてこれたのかなぁ、と。


今でもPaix2の元には、受刑者や出所者から多数の手紙やメッセージが寄せられるそうです。こうした反響、声があるからこそ「自分たちのやっていることが無駄じゃない」と感じ、辛くても前に進んでこれたのでしょう。

また「最初は小さなきっかけ」だったいうのも、とても納得できます。よく夢や目標は大きければ良いと言われますが、このように「目の前のことに日々全力で取り組んでいった結果、振り返ってみると遠くに来ていた。」という方も多いのではないでしょうか。

とにかく、日々を全力で生きる。それが積み重なり、いつしか大きなことができる。そんなことを教えてもらった気がします。


保護司就任はターニングポイント

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ーーーーお2人は最近、出所者の相談を主におこなう役目の保護司に就任されています。保護司就任にあたって、何か心境の変化等はあったのでしょうか?


井勝:一つのターニングポイントとして捉えています。何度も刑務所を訪れていると、やはりどうしても受刑者側(加害者側)の気持ちに立ってしまいやすくなるんです。しかし、保護司の活動をしていると被害者の存在から目を避けることはできません。そういった人たちの声を聞くことで、自分たちの立ち位置を改めて「中立」に修正するよいきっかけになりました。

北尾:今までもよりもさらに「覚悟」のような気持ちが芽生えてきたと感じます。私たちが担当の出所者を受け持つのはまだ数年先のことですが、今までコンサートだけのやりとりだった人たちと、実際に個人としてお話しするわけですし。「家に娘がいる保護司はそれが悟られないように靴を隠す。」という話を聞いたこともあります。不安が完全にないといえば嘘になりますが、気を引き締めて取り組んでいきたいと思っています。


保護司は、そのほとんどが定年退職した高齢の方がつとめられています。お2人のように若くして、しかも女性で就任されるのは非常に稀なケースです。井勝さんが言われているように「一度中立に戻る」ことで、今後のPaix2の表現や活動の幅も広がることでしょう。

また「靴を隠す」のエピソードからは、世間の目の厳しさを実感せざるおえません。


Paix2の考える出所者支援の課題とは

ーーーー数々の施設を周り、保護司として活動を始めて行く中で、何か課題のようなものは感じますか?


北尾:「教育」が重要かと思います。話を聞く限り、現在の刑務所のプログラムでは更生は難しいと思います。いくら出所後の就職を支援しても、しっかりとした教育を受けてしないと「連絡も無く職場に来なくなった」といったケースも減らないのではないでしょうか。出所と就職の間に、教育を行う「中間施設」が必要だと感じます。

井勝:一般の社会と同じで、施設にいる間に良い先行事例に触れてもらうことが重要だと思います。「これからどうなるんだろう?」と不安なまま出所しても、結局不安は消えません。一度罪を犯した人がそういった施設に講演などの話をしに行くことで「あっ、こういうルートもあるんだ」と知れば、受刑中にも出所後の目標が立てやすいんじゃないでしょうか。


北尾さんの言われている「中間施設」の取り組みは、以前取材させていただいた「ヒューマンハーバー」が今まさに取り組んでいることでした。こうした「出所後の教育」に力を入れる取り組みが増えれば、おのずと就職後の離職率も低下していくことでしょう。

また、井勝さんの言われている「良い先行事例を刑務所にいる間から知れる仕組みづくり」も非常に共感できます。僕自身、受刑中にそうした事例を探しましたが、ほとんど見つからず不安なまま出所した過去があります。僕がこういったブログを書くことで、少しでも助けに参考になる人がいればいい。改めてそう思わされました。


夢は「刑務所から紅白歌合戦へ」

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ーーーー最後に、今後の目標や抱負のようなものがあれば、聞かせていただけますか?


北尾:年末の「紅白歌合戦」に出場することです。なぜ紅白かというと、あの番組は受刑者の方みなさんが観れるからです。他の番組だと、施設によって見れないこともあるでしょうが、紅白だったら全員が見れます。

井勝:何年もこうした活動をしていると、私たちの姿を継続的に見ている受刑者の方もいます。そうした方たちに「Paix2がこうして頑張っているから、自分も頑張ろう」と思ってもらいたいんです。

片山:受刑者の中には、Paix2がテレビに出ると特別に発信の許可をとってわざわざ手紙を送ってくれる方もいます。「みんなで正座して見ました」なんてことが書いてあったりするんですね。「紅白出場」は世間の団欒から一番遠い、そういった人たちの大きな励みになるんです。


刑務所と紅白。

ある意味一番遠い2つの場所。もし、その夢が叶うとすれば「一番遠い2つの場所をつなぐ」という意味で、それは本当に素晴らしいことです。

井勝さん、北尾さん、そして第三のメンバーといっても過言ではないマネージャーの片山さん。これからも、志のもと刑務所に「癒し」と「笑い」を届けていってください。

ありがとございました。


ご興味がある方は、Paix2のCDや本もぜひ!

(参考リンク)
・Paix2(ぺぺ)OFFICIAL WEBSITE 

逢えたらいいな
Paix2
鹿砦社
2012-04-21


しあわせ
Paix2
日本コロムビア
2015-06-17