「元受刑者を雇っている居酒屋が開店する」

そんなニュースを目にしたのは、去年の5月。このブログでも、みなさんに知って欲しいと思い取り上げさせてもらいました。

(参考記事)刑務所出所者・支援居酒屋「新宿駆け込み餃子」が素晴らしるぎる!

場所は東京歌舞伎町。世間に疎い僕でさえ、日本一の歓楽街であることは知っています。

一体どういう人が、どういう想いでのこの店を立ち上げたのか。
そして、どういった人が実際に働いているのか。
これから、この事業はどこに向かっていくのか。

そんな率直な疑問をインタビューさせて頂きました。

全4記事のうち、初回となるこの記事では、再チャレンジ支援機構の広報担当であり、日本駆け込み寺の職員でもある千葉龍一さん。店舗全体のコンサルタントを引き受ける、株式会社セクションエイトのブランドプロデューサー竹内仁栄(きみはる)さん、そして、店長の菊池優(まさる)さんへのインタビューです。


【店舗情報】
店舗ホームページ
Facebookページ
・住所   :新宿区歌舞伎町1-12-2 第58東京ビル1階・2階
・営業時間 :24時間営業(1/16より)
・定休日  :年中無休
・通販サイト:通販公式ホームページ


新宿駆け込み餃子とは

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(左から:竹内さん、菊池さん、千葉さん。)

ーーーー「新宿駆け込み餃子」の概要を、簡単に教えていただけますか。

千葉:ここは一般社団法人「再チャレンジ支援機構」が取り組んでいる「元受刑者の社会復帰プロジェクト」の一環として運営している店舗です。この店舗では、刑務所出身者を雇用することにより、彼らの社会復帰を支援しています。

ここで働くには、主に以下の4つの流れがあります。

①自立準備ホームから
…再チャレンジ機構では、就職先の他にも、元受刑者に住居の提供を行っています。その居住者から採用となる流れです。

②刑務所の中から採用
…刑務所の中からそのままここへ採用されるケースです。

③歌舞伎町パトロールでの勧誘
…夜には歌舞伎町のパトロールを行っているのですが、キャッチで声をかけて来た人間が出所者というケースは多くあります。こうしたルートから入ってくるケースです。

④弁護士からの紹介
…弁護士から「見てやって欲しい人間がいる」と紹介がくることもあります。

ーーーー採用にあたって、何か基準などはあるのでしょうか。

千葉:当たり前のことですが、面接に遅刻してくるような人間は不採用になります。これまでも「来る」といって何の連絡も無しに来なかったケースが数回ありました。

また、もし特別な更生プログラムを受けていれば別ですが、基本的には性犯罪関係や薬物の累犯は断るようにしています。他にも、重大事犯であったり、あまりに長い刑期の人は、今のところ断ることが多いです。

まあ、中には「刑務所で仮釈放をもらうためだけに募集した」という人間もいたりします…。

ーーーー「仮釈放のためだけの応募した」とは何ともやるせない気持ちになる話ですね…。元受刑者以外に、一般の方も働かれているのでしょうか。

千葉:はい。刑務所を経験した元受刑者は今までに14人雇用し、現在働いているのは2人です。多い時は5人ほどが同時に働いていました。他のスタッフは、一般のアルバイト募集で来た人や、再チャレンジ支援機構が別の事業でサポートしている元引きこもりの人などで構成されています。

ーーーー辞められた方は、その後どういった進路をとられたんでしょうか。

千葉:中には、連絡が取れなくなった人もいますが、多くはスーパーやタクシー会社、運送業など他業種に転職して頑張っています。

あと、うちで働くようになった元受刑者へのフォローは24時間で行っています。もし相談があれば、時間が午前3時でも5時でも関係ありません。ただ、最後に決めるのは本人です。可能な限り寄り添うようにしてますが「出て行きたい」という本人の意志が強ければ、止めることはできません。

僕は最初「開店するにあたって元受刑者だけを雇用している」と勝手に勘違いしていたため、一般の人もいるのに少し驚きました。たしかに、全体の比率でみれば「元受刑者」圧倒的な少数派です。こうして、一般の方と一緒に働くケースが通常でしょう。

また、「仮釈放のためだけに応募してくる人間がいる」という聞いたときは、正直憤りを覚えました。応募して通るということは、たぶん、刑務所の中では模範囚で刑務官の評価も高かった人なのでしょう。しかし、そういった「一時しのぎの行為」が、こうして支援をしてくれている人たち、そして、後に続く後輩たちにどれだけ悪影響を及ぼしているかを考えて欲しいと思います。

その他には、性犯や薬物犯、そして重大事犯の受け入れ先はまだまだ少ないということです。ただでさえ厳しい元受刑者の就職。彼らは一体どのように生活しているのか、自分の足で実際に会いにいき、話を聞かせて欲しいものです。



元受刑者と一緒に働く中で気づくこと・嬉しいこと

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ーーーーーよく「元受刑者は堪え性がない」「すぐ投げ出す」といった声を耳にします。(※断っておきますが、話を聞かせて頂いた3人は、私以外刑務所経験していません。)関わっていく中で気づいた、元受刑者特有のつまづくポイントなどはあるんでしょうか。

竹内:そうですねぇ…。あえていうなら、社会経験が乏しい人が多いので、苦しいときの「山を超える力」というか、粘りのようなものが少し欠けている印象があります。自分に対しての弱さ、のような。

よく問題にされる「年齢」に関しては、その年その年の役割を与えるようにしているため、そこまで重要ではありません。あと、料理経験者の方が素人よりも、新しい物に対して頭が固いように思えます。
千葉:コミュニケーションに難がある人が多いですが、そこは我慢強く見守っていくしかないと思っています。

あと、感じるのは「過去の栄光にすがっている人ほど伸びない」ということです。特に以前は羽振りの良い生活をしていた人にその傾向は強く、一から誰かの元で働くのが耐えられないようです。

ただ、前は人と目も合わせられなかったスタッフが今ではガンガン注文を取りに行ったりするのを見ると、やりがいを感じますね。
菊池:僕は、特に「元受刑者だから」といったつまづきやすい所は感じないですね。もちろん、個々の特性は配慮しますが、元受刑者も一般の従業員も何ら区別せずにフラットに評価しています。

やってて思うのは、受動的だった人が能動的に動けれるようになっていくのが、やっぱり見ていて嬉しいです。

「過去の栄光にすがっている人伸びない」という千葉さんの言葉は、本当によく分かります。自分自身、出所後は妙なプライドだけが肥大化しており、うまく周囲に溶け込めませんでした。「自分がこれまで何をして、どう生きてこようが、その会社や職場に入れば一番の新人で素人」その事実を受け止めることができなければ、人は伸びて行かないでしょう。

それは「料理経験のある人の方が考え方が固い」という竹内さんの見解にも通ずるところがあります。まずは、自分のやり方よりも、その場所のルールや風土を認め、消化していくことが先決です。

また、店長の菊池さんの「フラットに評価している視点」は、当の本人(元受刑者)からすれば、とても嬉しいと思います。下手に気を使われるよりも、そちらの方が思い切り仕事ができるものです。


これまでにあったトラブルなど

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ーーーー元受刑者を雇用するとなると、一般のお店とは少し異なる目が向けられると思います。周囲からの反発やお客とのトラブルなどは無かったんでしょうか。

千葉:こういう土地柄ですから、特に周囲の反発といったものはありませんでした。

もちろん、トラブルが全く無かったわけではありません。仕事自体は一般的に3Kと呼ばれる部類に入りますし、中には1日で辞めていった者もいます。ただ、他の就労支援事業の話を聞いていると、そういったトラブルは少ないようです。

ーーーーそれは、何か違いのようなものがあるんでしょうか。

千葉:たしかに、まだ開店して1年も経っていないのも理由の一つでしょう。しかし、私たちは元受刑者に対して「住居」(自立支援ホーム)も提供し、その他にも24時間相談できる態勢をとっているのが大きいように感じます。

元受刑者にとって、就労は大きな壁です。しかし、それと同時に大事なのが「相談できる相手がいる」ということ。これは、実際に相談するかしないかは別にしても、「そういった相手がいる」という安心感だけで大きく心持ちは変わってきます。

自分の場合は家族が引受人になってくれましたが、中には身寄りの無い元受刑者も大勢います。さらにいえば、このお店があるのは日本でも一、二を争うほどの欲望が集う歌舞伎町。落ちようと思えば、いくらでも落ちていってしまいます。そんな場所に「相談のプロ」がいることはどれだけ心強いことでしょう。


この店舗・事業のスタンス

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ーーーーこの店舗や事業で、何か大事にしているスタンスなどはありますか。

千葉:ここでの就労支援は、あくまで社会復帰と捉えています。そのため、「ここで一生働く」というよりかは、先に例を挙げた人たちのように「他の就職先への準備事業」のような位置づけで捉えています。

ヒューマン・ハーバーもそうですが、これは一つの流れのように感じます。刑務所と一般企業の橋渡し役のような事業が、今後も就労支援の場においては増えてくるのではないでしょうか。「ここでこのまま働きたい」という方は、その方の意志を尊重しているそうです。


「相談できる人がいる」のがこの事業の強み

インタビューを終えて、一番強く感じたのは「相談できる人がいることの強み」です。もちろん、他の就労支援の現場でも、そういった仕組みは存在すると思います。しかし、24時間態勢で取り組むとなると話は別です。そこまで情熱をもって、取り組める事業はそうないでしょう。

また、この事業には「日本駆け込み寺」という日本全国から様々な相談が寄せられる公益社団法人が関わっています。そういった「プロ」の存在が、大きなトラブル無くこの事業がスタートできた理由ではないでしょうか。

明日の後編では、店舗全体のコンサルティングをされている竹内さんに「餃子・火消し隊といったコンセプトに込められた意味と想い」についてお話を伺います。


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